心血管疾患を抱える人々やその影響を受ける人々の声を代弁するために設立された、世界初の国際的な非営利組織・連合体であるGlobal Heart Hub主催の会議が2026年6月8日(月)~6月10日(水)までオランダ・アムステルダムにて開催されました。27の国、52の患者団体と医療機器・製薬企業から120名が集まり、当会の福原代表理事が参加しました。
以下、福原代表理事からのレポートが届いておりますので、ぜひご覧ください。
今回は初めての試みとして、4つの患者グループ(Patient Networkと呼んでいる心臓弁膜症、心不全、心筋症、そして女性の心臓病グループ)が一堂に会しました。
患者の視点から、患者の声を通じて、企業と協働することで循環器病と共に暮らす人たちの声を広げていくために集まりました。今回の3日間の会議を通じて学んだことを紹介します。
- Value-Based Health Care(VBHC, 価値に基づく医療)の概念と理論。日本を含め多くの国が、医療費の増加に伴う給付と負担の課題を抱えています。VBHCの目的は患者にとっての価値を最大化することにあります。「患者の健康状態という成果を、どれだけ効率よく生み出せたか」で医療の質を測る考え方を学びました。
- 心臓弁膜症についてESC/EACT*1ガイドライン*2を中心に最新の弁膜症治療を学びました。大動脈弁、僧帽弁、三尖弁共にカテーテル治療技術の開発と浸透が進んでいるなか、患者における低侵襲治療への関心と治療成績の関係については各国共通の話題でした。またガイドラインは主に医療者のためのものですので、患者が理解するのは困難がある事も話題になり、患者向けのガイドラインも用意されていることが紹介されました。(Patient Versions of ESC Guidelines: Empowering Care)
日本の循環器病においても患者向けのガイドライン作成がはじまりましたので、今後の展開に期待しています。 - 弁膜症患者団体でのグループ討議ではベストプラクティスの共有、「Patient Journey Report (患者・治療の旅)」*3の重要性と更新案などを話しました。私からは日本の医療環境として循環器病対策基本法、対策計画、国民皆保険制度、高額医療費制度を紹介しました。
- 患者中心の医療から患者参画*4に向けて。医療において患者参画が進むと、医療成果への貢献、予防医療への関心、医療満足度、回復、医療費など多方面にいい結果がもたらされます。病気の早期発見、治療選択への関与、治療機会などに患者参画が進むことで改善が見込まれ、そこを目指していくことが大切と強調されました。
- 医療機器、医薬品企業との対話もありました。協働の可能性、倫理基準の共有、デジタル・AIの利用などが話題になりました。
- 動脈硬化による血管閉塞が原因で心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす疾患群であるASCVD(動脈硬化性心血管疾患)について講演と当事者から学びました。リスク因子の管理と生活習慣改善、適切な薬物療法により、発症や再発のリスクを大幅に低減できるそうです。啓発の必要性を強く感じました。
代表理事 福原斉


*1 ESC: European Society of Cardiology
EACTS: European Association for Cardio-Thoracic Surgery
*2 ESC/EACTガイドラインとは、欧州心臓病学会(ESC)と欧州心臓胸部外科学会(EACTS)が共同で策定する、心臓疾患の診断や治療に関する最新のエビデンスに基づいた国際的な臨床診療指針です。
(参考:European Society of Cardiology|2025 ESC/EACTS Guidelines for the management of valvular heart disease)
*3 「ペイシェントジャーニー(Patient Journey)」とは、患者が病気の兆候を自覚してから、受診、診断、治療、その後の療養や社会復帰に至るまでのプロセスを「旅」に見立てて可視化した概念です。そして「ペイシェントジャーニーレポート」は、それらの患者の行動、感情、課題、情報接点を調査・分析しまとめた報告書を指します。
(参考:一般社団法人日本医療・病院管理学会|ペイシェント・ジャーニー)
心臓弁膜症ネットワークでは過去に勉強会を行っていますのでご興味のある方はぜひご覧ください。
▼健康ハートの日2024心臓弁膜症ネットワークオンライン勉強会「~あなたの望む治療をするために~心臓弁膜症と歩む道のり」
https://youtu.be/4OsVGnPYaNw?si=pYCynEGZXu7boXQo
*4「患者中心の医療」は患者の意向や価値観を尊重する姿勢ですが、さらに進化した「患者参画(ペイシェント・エンゲージメント)」では、患者が医療の単なる受け手から医療チームや政策決定のパートナーへと能動的な役割を担うことを意味します。
(参考:日本製薬工業協会|医療分野における「患者・市民参画」(Patient and Public Involvement)を考える)