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健康ハートの日記念イベント 心臓弁膜症の治療・術後管理について -抗凝固剤(ワルファリン)との付き合い方 を開催しました

8月10日の健康ハートの日を記念し、8月11日に心臓弁膜症の治療・術後管理について -抗凝固剤(ワルファリン)との付き合い方を開催しました。

勉強会開催にあたっては、日本循環器協会様のご後援をいただきました。事前申込に133名、当日は92名もの方にご参加いただきました。ご参加いたたいだ皆様、日本循環器協会様、ありがとうございました。

今回は石津智子先生(筑波大学循環器内科・日本循環器協会)、神谷千津子先生(国立循環器病センター 産婦人科部)、中嶋智美先生(埼玉医科大学国際医療センター 心臓血管外科)をお招きし、術後の血栓予防や服用時の生活の注意点、今開発中の低ビタミンK納豆等についてお話いただきました。

ご講演後には事前質問・当日視聴者からの質問をもとに質疑応答・ディスカッションを行い、弁選択や女性のライフステージにおける課題などについてご回答いただきました。当日時間の都合上お答えできなかった質問に関しましては、アーカイブ動画とともに後日公開予定です。

機材トラブルで配信開始が遅れましたが、参加者からは「検索してもなかなか出てこないけれどとても知りたかった情報をとてもわかりやすく教えてくださり、本当にありがとうございました」「今後の自分の弁選択の一助になりました」などの声が寄せられました(参加者アンケートより)。

アーカイブ動画

こちらよりご覧ください。当日の音声トラブルを修正したバージョンとなっています。

事前質問

事前質問・当日質問で、当日ご回答できなかった質問は下記の通りです。()内は回答者です。

ご自身の治療に関することは、主治医や医療従事者にご相談ください。

TAVIの弁と開心の弁では管理方法に違いは有りますか?

Sapienは半年DAPT(抗血小板薬二剤併用療法), その後SAPT(抗血小板薬単剤療法), Evoluteは3ヶ月DAPTと添付文書に記載されています。日本循環器学会の「2020年改訂版 弁膜症治療ガイドライン」では、TAVI後の抗血栓療法は6か月未満のDAPT後、SAPTを継続することがクラスⅡaで推奨されています。最適な抗血栓治療はまだエビデンスがありません。(石津先生)

インターベンションで挿入される弁はステントのように抗凝固成分が徐放される設計になっていますか?

カテーテルで留置される生体弁も外科的に置換される生体弁も、ステントのように抗凝固成分が徐放される設計にはなっておりません。(回答: 医療機器A社)

TAVI治療後、留置した人工弁自体に対して、また二次的な血栓塞栓症イベントを防ぐために数か月間DAPTを行うことを推奨しております。※DAPT(二剤併用抗血小板療法)
DAPTの期間については使用製品の添付文書または医師にご確認下さい。(回答: 医療機器B社)

※詳細につきましては、各企業、各製品ごとにご確認ください。

ワルファリンから他の抗凝固剤に変更する時の注意点などは?

抗凝固剤は、ワルファリン、直接作用型経口抗凝固薬 DOAC, ヘパリンの3種がメインです。ワルファリンからDOACに変更するときは、ワルファリン投与中止後、PT-INRが治療域の下限よりも低くなっていることを確認してから速やかにDOAC投与を開始する必要があります。PT-INRの基準値は薬剤ごとに異なります。

注意すべきことは、ワルファリンは中止しても効果がなくなるまでに数日かかるため、ワルファリン中止後翌日からDOACを内服すると、抗凝固の効果が強すぎて出血傾向に陥ることです。仕様書に沿って慎重に切り替えすることが大切です。ヘパリンは基本的には点滴投与で、持続投与を中止すれば速やかに効果が消失するため、DOACほど厳密な移行期間を設ける必要はありません。

なお、前提として、心臓弁膜症で機械弁の場合はDOACは使用できません。過去の研究に基づいています。(石津先生)

機械弁の周りに付着した血栓や疣贅の処理についてと付着の予防策について教えてください。

機械弁の周りに付着した血栓の処置:1)抗凝固療法(これ以上固まらないようにして、生体内に本来備わっている血栓溶解作用を待つ)の効果を確認、2)急ぐときは、血栓溶解薬を投与、3)あるいは外科的に取り除く という3種類があります。それぞれ、状態に応じて選択します。血栓の大きさや、弁の機能障害の程度、早急に対応しないといけない状況なのか、などに応じてベストと思われる方法を取ります。予防:治療域のワルファリンコントロールを継続すること。


疣贅:これは、感染性心内膜炎の際に用いられる用語です。最近では疣腫と言います。もしも感染によって、弁の周囲に疣腫ができたら、1cm以上ある大きな疣腫で、可動性に富む場合、すでに繰り返す塞栓症をきたしている場合、弁が外れかけている、心臓のポンプ機能に異常が生じているなどの場合は、(準)緊急手術が勧められます。


予防:感染性心内膜炎の予防としての生活習慣+ハイリスク医療手技での予防的抗菌薬投与
非感染性の肉芽(パンヌス)の増生:弁の開放や閉鎖を妨げている場合には、その程度によって再弁置換術が必要になることもあります。実際は稀です。有効な予防策はないと思います。(石津先生)

ワーファリンと油脂の関係。ワーファリンの効きを阻害するビタミンKは脂溶性ビタミンだということで、揚げ物をたっぷり食べた後に簡易測定器でのPT-INR値が上がるように感じています。どのような油脂なら比較的安全で、どのような油脂ならビタミンKが溶け出しやすいかなど知りたいです。

ビタミンKは脂溶性ビタミンですので、油で調理した場合はその油の中に溶け出しますが、その油も一緒に食べるかどうか、また調理前の状態として一度冷凍したり、加工をしているか否かによって、実際に口にするビタミンKの量は変わります。調理油自身にもビタミンKは含まれていますが、炒める際に少量使用する程度であれば、特に大きな影響はないと思います。油脂のなかで比較的ビタミンK含有量が多いとされているのは、オリーブオイルやマーガリンなどです。調理中に少量使用する範囲を超えて摂取する場合には、摂取のし過ぎに注意が必要です。
油の違いによるビタミンKの溶けやすさについては、あまり解明されていないと思います。(中嶋先生)

主人が弁膜症の場合、遺伝することはありますか?

後天性の弁膜症は一般的には遺伝しません。ご主人の弁膜症のタイプによって、異なりますので、主治医の先生に聞いてみると良いと思います。
特殊な場合、例えばマルファン症候群で僧帽弁逸脱症などは、半分の確率でマルファン症候群が遺伝する場合もあります。ただし、異常遺伝子が引き継がれても必ず同じような弁膜症になるとは限りません。
大動脈二尖弁の中には、遺伝する家系もあります。家族内に大動脈二尖弁の方がいる場合は、兄弟、子供など一親等以内の家族のスクリーニングを推奨している国もあります。(石津先生)

6月に僧帽弁閉鎖不全症と診断されOp待ちです。この日入院していなければ参加します。よろしくお願いいたします。当事者ですが、福祉の相談援助職です。当事者になって、社会的弱者になることを身をもって感じています。その中には憤りや感謝もあります。op後の社会復帰に不安を感じながらお話をお聞きできたらと考えています。

その後、いかがお過ごしでしょうか?手術を控え、その後の生活や社会復帰への不安をお持ちになる気持ちはよく分かります。まずはどんな手術なのか、退院後気を付けることはなにかなどについてよく知ることが大切だと思います。退院後ある程度時間が掛かりますが、元の生活に近いものを取り戻した方を多く知っています。仕事を含む社会復帰や趣味も同様です。全く同じ様にはいかないかも知れませんが、これまでになかった新しい経験や出会いもあると思います。心臓弁膜症ネットワークの「体験者の声」も参考にされではどうでしょうか。(代表理事・福原)

体験者の声のページはこちらから
https://heartvalvevoice.jp/patient_voice/

手術後3年で6㎏太りました。その後どんどん太り10㎏、現在、ワーファリンが増え、心房粗動になり薬を追加されました。どうやって痩せたらよいかまた、やせる以外方法はありますか?ワーファリン、心房粗動を抑える方法をご教示ください。

心臓の変化や薬が増えることで心配になりますよね。私も術後10か月で3kg太ってしまいまいした。出来てない私がお話するのもどうかと思いますが、食事と運動だと思います。食事は朝、昼、晩と3回に適量(腹八分目?)、アルコールは控えめがいいようです。コロナで制限が多くありますが、毎日の運動も大切な要素です。1日1時間、1万歩を目標にしたウオーキング・有酸素運動が出来るといいようです。最初は 15分とか30分からでしょうか。ジョギングや水中ウオーキングもありだと思います。(代表理事・福原)

また、本勉強会の様子を後日心臓弁膜症YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCDlP_lsZIYUFy1EGwNSqf0Q/)にて公開予定です。SNS・ウェブサイト等でお知らせします。

なお、これまで開催した勉強会の内容は、こちらをご覧ください。

https://heartvalvevoice.jp/news/benkyokai210929/

健康ハートの日の取り組みについてはこちら(日本心臓財団、日本循環器学会、日本循環器協会共催)

https://www.kenko810.com/

【勉強会開催概要】

健康ハートの日記念イベント 心臓弁膜症の治療・術後管理について -抗凝固剤(ワルファリン)との付き合い方

日時:2022年8月11日(木)13:30~15:05

参加費:無料

対象:心臓弁膜症と診断された方、手術を控えている方、手術後の方、家族、支援者、医療従事者、

その他関心のある方

講師:石津智子先生(筑波大学循環器内科・日本循環器協会)

神谷千津子先生(国立循環器病センター 産婦人科部)

中嶋智美先生(埼玉医科大学国際医療センター 心臓血管外科)

 

内容

① 講義:心臓弁膜症の治療・術後管理 -血栓、妊娠、出産、婦人科系、低ビタミンK納豆開発について

② 講師への質問、参加者からの工夫の紹介

後援:日本循環器協会

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