病気の体験を共有したい、病気をきっかけに変わりたい

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近藤 伶子(こんどう れいこ)
1982年生まれ
僧帽弁・三尖弁閉鎖不全症
会社員

近藤さん お写真

診断された内容と受けている治療について

2020年の3月に、内科で心臓の雑音を指摘されたことをきっかけに、それから2か月後の5月に僧帽弁、三尖弁の形成術を受けました。
病気になって、同じ病気の方がどのような治療をうけて、治療後どのような変化があるのか? 病気の事をどのように受け入れていらっしゃるのか? このような情報が少ないことを感じました。
私の体験談を読んでくださることで、気休めでも良いので、不安を和らげる情報の1つとなれれば幸いです。

症状が出始めた時の様子

「咳が止まらない」そこから全てが始まりました。
夜、眠ろうとすると咳が出て眠れない夜が増えていました。2020年3月のことです。
ですが、当初は市販の咳止め薬を飲むことで症状を抑えることが出来ていました。この時点では病院を受診することなど考えもしなかったです。眠れなくなり始めて2週間ほどたった頃、夜だけでなく日中にも咳の症状が目立つようになりました。
世間では新型コロナウィルスの流行が盛んに報道されている時期でもあり、咳が出たまま職場に居続けることで「周りに通常以上の心配をかけてしまっている」と感じるようになりました。
周りへの申し訳なさを理由に症状が出始めてから2週間後に内科を受診しました。

症状が出始めた時の様子
咳の症状も目立ち始め、周りへの申し訳なさもあり受診に至った

内科で聴診器をあてて頂いた時、先生が少し考え込むような表情をされて「心臓から雑音がする」「脈拍が異常に早い」と、何だか"咳"の症状とは関連がないような事をおっしゃり、循環器科の受診を勧められました。
その時は、咳の症状と心臓病とが頭の中で結びつかず、ただ相槌をうって説明を聞き流していたような気がします。
循環器科では、胸部レントゲン、胸部のエコー検査を行って頂き、心臓の肥大と血液の逆流が起こっていると説明を受けました。

  • 投薬だけでは治らない
  • 将来的には手術をしなければならない
  • 念のために総合病院で精密検査を受けたほうがよい

この3点しか覚えていません。
自分が「本当に心臓病になってしまった」という実感が初めて沸いてきて、治療、仕事、寿命、お金の事、家族の負担、心配事が次々と頭の中を埋めつくしました。

診断されてから今までで困ったことや課題など

同じ病気に罹っても、症状や回復のスピードはそれぞれだと思います。
病院や会社への手続きのことや、これからどんな治療がはじまるのか? など不安は沢山ありました。
出来るだけ多くの体験を知って、考えられるケースを想定して、不安を払拭したいと考えていました。
しかし、インターネット上で情報を探してみても、なかなか見たい情報は見つかりません。
やっと見つけたと思った体験談が、読み進めてみると人間でなく犬の話であったこともありました(弁膜症に罹るのは人間だけではない事も初めて知りました)。
この体験を経て、細々とですが自分が不安に感じていることや病状を、SNS上に書くことを始めました。「何でもいいから、同じ病気の方の情報が欲しい」と思っているのは、自分だけではないはず…。
実際にやりはじめてみて、質問を返してくださる方もいらっしゃったりして、やってよかったと感じています。
また、この病気は減塩が重要なのですが、どうすれば良いのか分からず最初は極端に味の無い食事になってしまうこともありました。今は同じ病気の方の料理の写真を参考にして、量を加減したり調味料の選択を工夫したりすることが出来るようになりつつあります。
不安の吐露や病院に行ってきた! などの独り言も、誰かが知りたいと思っている情報のひとつになりえるかもしれない。病気が情報発信の大切さを教えてくれた気がします。

障害者手帳の取得について

私は今回、弁形成術を受けて身体障害者手帳4級の認定を受けました。手術費用に自立支援医療を適用するためです。自立支援医療は公費で手術費用の負担を軽減する制度です1
手術の入院説明の際に看護師さんから説明を受けたのですが、インターネット上で情報収集しているうちに疑問が沸き上がってきました。

  • 弁形成術で障害者手帳が取得できるのか?
  • 自立支援医療を受けなくても高額療養費制度を受ければよいのではないのか?2

弁置換術を受けた方の手帳取得の情報はありますが、弁形成術で取得された方の情報は見つけることが出来ませんでした。
また、自立支援医療についても制度の概要についての情報はあるものの、私の疑問に答えてくれるものではありませんでした。答えが見つからないまま手続きが進み、結果的に手帳を取得することが出来て、自立支援医療を受けて費用を精算しました。結果については良かったと感じています。
ですが、私と同じ病気の方全員が同じ認定を受けられるのか?といった部分が明確でないため、手帳の取得をすすめるものではなくあくまでも一例として取られて頂ければと思います。

1自立支援医療は、育成医療(障害児に対する医療費補助)、更生医療(身体障害者手帳をもった18歳以上の方で、一定の基準を満たした場合の医療費補助)、精神通院医療の3つからなり、近藤さんの場合は更生医療の適応です。手術費用以外にも、疾患により対象となる治療が異なります。また、所得により、自己負担額の上限が異なります。手続きには、身体障害者手帳が必要です。詳細はお住まいの市町村区の障害福祉課(またはそれに準じる課)までお尋ねください。

自立支援医療(更生医療)東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shougai/nichijo/s_iryou.html
自立支援医療の概要 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/gaiyo.html

2自立支援医療(更生医療)は、総医療費の1割(通常の医療保険は3割)を負担する制度です。所得、治療期間に応じて自己負担の上限額が異なります。一定所得以上で、自己負担額が高額になる場合、高額療養費制度が優先されます。

自立支援医療(更生医療)の認定を受けた場合、医療機関で払う一部負担金の額はいくらになりますか。鹿児島市
https://www.city.kagoshima.lg.jp/faq-kenkofukushi/syofuku-syo/q23.html

術前から現在までの変化

病気になって、やっぱり「辛い」です。ただ、辛いことの種類はどんどん変化してきていると感じています。

段階 辛いことの種類
病名がつくまで 咳が辛い
診断がついた後 水分制限が辛い(心臓が弱ると体が水分をため込みやすくなるため)
手術直後 痰を出すのが辛い(人工呼吸器の影響で痰が出やすくなる。胸に力を入れることが怖くてうまく痰が出せない)
退院直後
  • バストバンドが蒸れて辛い(術後は胸骨を固定するためのバンドを着用)
  • 重いもの(3キロ以上のもの)が持てないため、出来ることが少なくなる
現在 細かい体調不良(起きがけに感じるむくみ、天候不良の日の閃輝暗点など)

こうやって文章にしてみると、辛いことを羅列しているのに確実に自分は元気になってきているんだと思えます。今の私は、水分制限もなく、バストバンドを着用することもなく、4キロ以上ある掃除機を使いこなすことも出来る。うつ伏せで寝る事だって!
でも、体は浮腫みやすいし、脈も速くなりやすい、天気が悪いと閃輝暗点になりやすい。車で病院に行くときも、シートベルトが傷に触れて不安になります。
手術から5か月たっても不安なことは無くなりません。一生付き合っていく病気なのだと感じています。

入院中のお写真 退院直後のお写真
手術前から手術直後、退院直後と辛さの種類が変化してきた

精神面について

私は後ろ向きで完璧主義で、自分で書いていても面倒くさいなと感じる性格です。その考え方で生きてきて、今までは何とかなっていましたが、術後はもう無理が出来ません。出来ないことがあっても自分のペースを考えて物事を進める必要があると思っています。
実は病名がつく半年ほど前から、仕事で数字に寄与できる成果を出せていない自分を責める事が多くなっていました。上司や同僚は誰も私のことを責めていないのに、周りの言葉も聞かず数字が出せない事に凄くこだわっていました。それは辛い日々でしたが何かを変えようと思う余裕もなく、そのまま病気が分かり手術となりました。
復職が決まって、絶対に今までのような自分が辛くなる考え方はやめよう! と思って臨みました。人に判断を委ねてみる。優しい言葉を素直に受け取ってみる。過去の自分(の仕事)を認める。
それだけで、心がだいぶ楽になりました。自分を変えることは本当に難しいことだと思いますが、少しずつ変われていると実感しています。

この病気になって、身体的に受けたダメージは大きかったです。ですが、精神的に立ち直るきっかけになったのではないかと思います。"自分に優しくする"ことが出来ていたら、私はもっと前に病院に行くことが出来たかもしれない(少なくとも咳で眠むれない日が1日あったら、その時点で病院に行くことが出てきていたと思います)。
同じ病気の方々と交流させて頂いて、真面目な方が多いと感じました。この体験談が、ご自身のことを大事に考えるきっかけになればと思います。

弁膜症ネットワークオンライン交流会のお写真
心臓弁膜症ネットワーク主催の会で、同じ病気の仲間と交流している
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