退院後の生活
心臓弁膜症は、外科手術やカテーテル治療によって症状が大きく改善しますが、継続的な治療や定期検診、そして治療効果を高めるための生活の工夫が欠かせません。
ここでは、弁膜症の術後の治療や生活について一般的な例をご紹介します。
外科手術やカテーテル治療のあと生活がどのように変化するのか、不安を抱える方が多いと思いますが、あらかじめ知っておくことで不安がやわらぐこともあります。
さらに詳しいことや経験者の声を知りたい方は、PPeCC(ピーペック)サロンもあわせてご利用ください。
退院後も血液をサラサラにするお薬を飲む
弁置換術後、機械弁の方は生涯、生体弁の方は3カ月間、血液をサラサラにする「抗凝固薬(ワルファリン)」を飲む必要があります。抗凝固薬を飲むことで、血栓という血の塊ができるのを防ぐことができます。
もしも血栓ができ、それが脳の血管や、心臓に栄養と酸素を供給する冠動脈など重要な血管に飛んでしまうと、命にかかわる病気を引き起こすこともあるため、抗凝固薬の飲み忘れには十分注意しましょう。
また、抗凝固薬の効き目には個人差があります。効き具合に合わせてお薬の量を調節するため、服用中は月1回程度、血液検査を行います。血液検査(受診)の間隔も患者さんにより異なるので、主治医の説明をよく聞き、疑問があれば尋ねるなどしましょう。
抗凝固薬の服用中はこんなことに注意を
お薬の飲み忘れに注意しましょう
医師から言われた通りの薬の量を飲みましょう
食べ合わせや飲み合わせに注意しましょう
出血やけがに注意しましょう
自分が飲んでいるお薬を覚えておきましょう
INRという検査値を覚えておきましょう
適度な運動を心がける
心臓の手術を受けたあとでも、なるべく早いうちから体を動かす方が早期の回復につながることがわかっています。入院中から心臓リハビリテーションを行うのもそのためです。退院してからも適度な運動を続けることによって、心臓の機能や体力は順調に回復していきます。
運動量の目安として、身体活動に必要な酸素量を表すMETs(メッツ)という単位があります。例えば、座って安静にしている状態は1METs、普通の速さの歩行は3METsに相当します。
適切な運動や制限した方がよい運動について、METsを目安に医師と相談してみてはいかがでしょうか。
表3 METsの例
METs |
活動内容 |
2~3 |
ゆっくり歩く、2階までゆっくり昇る、調理、シャワー・入浴 など
|
3~4 |
布団を敷く、床・窓ふき、風呂掃除、10kgの荷物を背負って歩く、自転車、ラジオ体操、ゴルフ、ゲートボール など |
4~5 |
軽い草むしり、介護、10kgの荷物を抱えて歩く、水中歩行、ダンス、テニス、バレーボール、夫婦生活 など |
5~6 |
軽い農作業、プール(ゆっくり泳ぐ)、野球 など |
HP 厚生労働省 第3回「標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」参考資料4「身体活動・運動の単位」
定期検診を忘れずに
抗凝固薬を服用している間は、医師の指示に沿って定期検診を受けましょう。何かにぶつけたりした記憶がないのに皮下出血したり、髭剃りのあとに出血が止まりにくいなどの症状があれば、すぐに主治医に相談してください。便が黒くなった場合は、胃や腸で出血している可能性があるので、同様に主治医に連絡しましょう。
生体弁の方で、抗凝固薬の服用が終わった場合でも、1年に1回は詳しい検査を受けることで異常を早期に発見できます。今までになかったむくみや息切れ、動悸などが起こった場合は、すみやかに主治医に相談してください。
弁の再手術について
生体弁の場合、15~20年で弁の異常や劣化により再手術が必要になる可能性があります。
患者さんによっては、植え込んだ生体弁と自分の組織が合わず、術後早期に再手術が必要になることもあります。
機械弁は弁自体の耐久性が高いため、心臓の機能が原因で異常が起きない限り再手術が必要になることはありません。
術後を健やかに過ごすためのヒント
健康チェックを心がけましょう
自分の体調や心臓の調子を知ることは、再発を防止し健康状態を維持するうえで非常に重要です。
毎日の体重測定
毎日の脈拍・血圧測定
むくみ、息切れ、動悸の有無
健康的な日常生活を送りましょう
睡眠・休養
食事
気をつけたい日常の動作
仕事
運動・スポーツ
感染症の治療
お酒
たばこ
性生活
妊娠