基礎知識

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病院を探す

公開日:2019年7月19日
院長 渡邉雅貴先生

病院に関する情報があふれる現代ですが、「信頼できる病院を探したいけれど、どうやって探せばいいのかわからない」「どんな情報をもとに病院を選べばいいかわからない」という方は多いようです。

弁膜症の治療、とりわけ外科手術やカテーテル治療は、専門医が在籍し、専門性の高い治療が行える病院で受けるのが理想的です。

病院の専門性を見極めるためのチェックポイントと、近くの専門的な病院を探すための手順を紹介します。

チェックポイント①
専門医がいるか

病院の診療科目に循環器科と書かれていても、必ずしも専門医が在籍しているとは限りません。日本では医療機関が自由に診療科を標榜できるため、標榜されている診療科と在籍している医師の専門領域が異なる場合もあります。

現在受診している病院、またはこれから受診する病院に「専門医」がいるかどうか、何人いるか、確認してみましょう。

「専門医」とは、一定レベル以上の専門的なスキルや経験を持つとして各学会に認定された医師に与えられる資格です。専門医の有無と人数は、医療機能情報提供制度に基づいて各都道府県が提供している「医療情報ネット」の各医療機関のページに記載があります。そのほかに各学会のホームページでも、専門医の名前と所属する医療機関名を調べることができます。

HP循環器専門医 日本循環器学会

日本循環器学会は循環器専門医を、「心臓・血管系に関する豊富な知識と技能を有し、心筋梗塞、狭心症、高血圧、動脈硬化、弁膜症、 心不全、不整脈、などの循環器疾患の適切な診断・治療及び予防ができる能力を有する。」と定義しています。

HP心臓血管外科専門医 日本胸部外科学会・日本心臓血管外科学会・日本血管外科学会

心臓血管外科専門医は、外科専門医のなかでも心臓血管外科における一定以上の手術経験および学術的な業績がある医師が認定されます。

HP心血管カテーテル治療専門医 日本心血管インターベンション治療学会

「インターベンション」とは、カテーテルを用いて行われる心血管内治療のことです。冠動脈形成術(PCI)、末梢血管インターベンション(EVT)、大動脈ステントグラフト、 構造的インターベンション(Structural Intervention)、小児先天性心疾患に対するインターベンションを含みます。

チェックポイント②
専門医が自分の病気を専門領域としているか

同じ循環器専門医でも、弁膜症治療を得意とする医師、不整脈治療を得意とする医師など、専門領域が異なる場合があります。最近は、病院ホームページのスタッフ紹介のページに、医師の経歴や専門領域が掲載されていることが少なくありません。また、その医師の名前をインターネット検索し、どのような領域の診療・治療、あるいは論文・学会発表などを行っているか調べるのも有効でしょう 。

最近は、弁膜症の手術など専門性の高い治療を行う病院(大学病院など)の主治医(専門医)と、患者さんが日常的に通院している医療機関の主治医(かかりつけ医)が、役割分担して1人の患者さんを診療する地域医療連携が一般的になっています。身近で弁膜症の日常診療を行うかかりつけ医を探す場合、専門医がいる病院から連携関係を結ぶ医療機関を紹介してもらうこともできるので、1人で悩まずに主治医の専門医や病院の患者相談窓口に相談しましょう。

循環器疾患における専門領域の分類と、診療する疾患の例

  • 冠動脈疾患

    急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞など)、慢性冠動脈疾患、安定冠動脈疾患、冠攣縮性狭心症、虚血性心疾患(心筋梗塞、労作性狭心症、安静狭心症) など

  • 不整脈

    不整脈、心房細動

  • 心不全・心筋疾患

    心不全、心筋症、心臓サルコイドーシス

  • 先天性心疾患

    左心低形成、心室中隔欠損、心房中隔欠損、完全房室ブロック、三心房心、完全大血管転移、エプスタイン(Ebstein)病、右心低形成、ファロー(Fallot)四徴症、大動脈狭窄・閉鎖不全、川崎病 など

  • 血管疾患

    血管炎症候群(高安動脈炎、バージャー病など)、末梢閉塞性動脈疾患(下肢閉塞性動脈硬化症など)、大動脈瘤、大動脈解離 など

  • 弁膜疾患

    感染性心内膜炎、僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、連合弁膜症 など

  • 肺循環

    肺高血圧症、肺血栓塞栓症、慢性肺動脈血栓塞栓症 など

医師が書いた論文を探す

国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)が運営する、「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)のサイトで、日本の学術誌等に投稿された文献を無料で検索・閲覧(一部有料)することができます。関心のある方は、医師がどのような領域の文献を投稿しているのかチェックしてみてください。

ただし、臨床を中心に活動する医師の場合、必ずしも研究論文があるとは限りません。

HPJ-STAGE 国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST)
  • 操作方法
  • 検索窓の下の「詳細検索」をクリック
  • 「指定検索」の下、左端のボックス右側の▼マークをクリックして「著者名」を選択
  • 「検索する語を入力してください」に医師名を入力
    ※入力する名前は日本語とアルファベットの両方を試してください。
  • 画面最下部の「検索」をクリック

チェックポイント③
受けたい治療を提供している

TAVIMICSなど、高度な技術を要する治療技術については、実施できる病院が限られます。また、身体機能の回復と再発予防のため、入院中から退院後にかけて心臓リハビリテーションを行うことが推奨されていますが、実施している病院はあまり多くありません。現在受診している病院、または受診しようとしている病院が、受けたい医療を提供しているか確認しましょう。

ただし、どの治療技術が適しているかは、その人の体の特徴や持病の有無、健康状態などによって異なります。そのため、必ずしも希望する治療が自分に適していないこともあります。

TAVIが受けられる病院を探す

下記ホームページでTAVI実施施設一覧を見ることができます。

HP経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会

TAVI実施施設一覧の用語解説

  • TAVR

    経カテーテル大動脈弁置換術。TAVI(経カテーテル大動脈弁植込術)と同じです。

    現在は、固くなった弁を取り除いて人工弁に置換するのではなく、弁を取り除くことなく人工弁を留置する(装着する)術式になっているため、TAVIと呼ぶのが一般的です。
  • TAV in SAV

    生体弁の患者さんで、経年劣化などで機能が低下した生体弁の中に、再びTAVIにより生体弁を留置する治療です。

心臓リハビリテーションが受けられる病院を探す

下記ホームページで、心臓リハビリテーション実施施設、心臓リハビリテーション指導士の在籍状況、患者の受け入れ状況(入院、外来)を調べることができます。

外来での心臓リハビリテーションが自費診療となる病院もあるので、事前に病院ホームページなどで確認しましょう。

HP日本心臓リハビリテーション学会

チェックポイント④
実績がある

自分の病気や受けたい医療について、どれくらい実績があるかもチェックしましょう。病院の実績が必ずしも医師個人の実績と同じではありませんが、患者数や手術件数、周術期死亡率、平均在院日数などの実績データは、医療の質を客観的に判断する材料になります。

治療実績の見方

  • 患者数、手術件数

    数が多いほど、医師および病院の経験値が高い可能性があります。ただし、手術年間100件以上の病院でも、医師それぞれの手術件数は異なるため、50件以上担当する医師もいれば10件以下の医師もいるかもしれません。手術件数については、直接医師に尋ねるのも手段の一つです。

  • 周術期死亡率

    周術期死亡率とは、一般的に手術中から手術を終えて退院するまでの間に死亡する患者さんの割合です。

    手術中や入院中に亡くなる患者さんの割合は少ないに越したことはありませんが、大学病院など設備と体制の整った大病院には重症の患者さんが多く集まり、結果的に死亡率などの治療成績が悪くなることがあります。

    反対に、軽症の患者さんが大多数を占める病院では、成績が良くなる可能性があるかもしれません。そのような事情を考慮して情報を見ることが大切です。

  • 平均在院日数

    在院日数とは入院日数のことです。

    平均在院日数は、医療が効率よく提供されているかどうかの指標になります。在院日数が短いと「病院からすぐに追い出されるのか」と不安を感じる方もいるかもしれませんが、質の高い医療が効率よく提供されるほど、在院日数は短くなると言われています。

    ほかの病院に比べて、平均在院日数が極端に長くないかなどをチェックしてみるとよいでしょう。

実績データを探す

患者数・手術件数、平均在院日数は、「医療情報ネット」のほか、各病院のホームページに掲載されている場合があります。また、以下のサイトで、患者数や平均在院日数をランキング形式で見ることができます。

HP石川ベンジャミン光一 資料公開サイトTableau Public

厚生労働省などが公開している医療情報について、地図やグラフを用いて見える化するツールを公開しているサイトです。医療経済の専門家である石川ベンジャミン光一氏によって作成されています。

サイト内の「厚労省DPC調査」から、疾患別、医療機関別の患者数、平均在院日数を見ることができます

  • 操作方法
  • 「厚労省DPC調査」のリンクをクリック
  • 「傷病から始める」タブをクリック
  • 「DPC6title」のプルダウンから「050080 弁膜症(連合弁膜症を含む。)」を選択
  • 「都道府県」のプルダウンからお住まいの都道府県を選択
  • 「MED2」の下からお住まいの二次医療圏名を選択
HP病院情報局(株式会社ケアレビュー)

厚生労働省が公開している医療情報(DPCデータ)をわかりやすく検索できるサイトです。各医療機関の患者数、全国の患者数が多い病院ランキングなどを見ることができます。

一部、有料会員向けのコンテンツがありますが、無料で見られる部分でも十分に情報を得られます。

操作方法

「DPC全国統計」メニューをクリック

「DPC全国統計」メニューをクリック

「診断分類」で「循環器系」を選択

「診断分類」で「循環器系」を選択

「傷病名」で「050080 弁膜症(連合弁膜症を含む。)」を選択

「傷病名」で「050080 弁膜症(連合弁膜症を含む。)

「変更する」をクリック

「変更する」をクリック

「都道府県」でお住まいの都道府県を選択

「都道府県」でお住まいの都道府県を選択

チェックポイント⑤
医師との相性はよいか

医師と患者も人間同士なので、どうしても相性があります。著名な医師や口コミの良い医師が、必ずしも自分にとっての“いい医師”とは限りません。

納得して治療を受けられるかどうかは、治療効果にも影響するので、治療方針の説明などで不安や疑問に思うことがあれば、納得できるまで質問することが大切です。

自分が信頼できる医師に出会うために、次のような点に注目しましょう。

  • 話をきちんと聞いてくれますか
  • 病気や治療について丁寧に説明してくれますか。質問に答えてくれますか
  • 仕事や生活への配慮がありますか
  • セカンドオピニオンを受けることに協力的ですか
  • 自分と相性がいいと感じますか

医師から説明された診断や治療方針に納得できない場合は、セカンドオピニオンを検討してもよいでしょう。セカンドオピニオンを受ける際は、最初に聞いた医師の説明をきちんと理解しておくことが大切です。

自宅近くで専門的な治療が受けられる病院を探す手順の例

Step1

患者数の多い病院ランキングから、いくつか候補をあげる

イラストイメージ

「病院情報局で、お住まいの都道府県の患者数の多い病院ランキングを見てみましょう。「患者数ランキング」メニューをクリックし、「診断分類」で「循環器系」を、「都道府県」でお住まいの都道府県を選択します。

ランキングの上位から、候補の病院をいくつかピックアップしましょう。
HP病院情報局

Step2

候補の中から、通える範囲にある病院を見つける

イラストイメージ

候補の病院の中に、自宅から通える病院があるか確認します。病院は入院前から退院後まで、何度も通う可能性があるため、自分と家族が無理なく通える距離にあることが望ましいでしょう。

「医療情報ネット」から医療機関名で検索し、病院までのアクセスを確認しましょう。

Step3

専門医の有無、人数、専門医の専門領域を確認する

「通えそうな病院が見つかったら、その病院に専門医がいるか、何人いるか、専門医の専門領域が何かを確認しましょう。(→チェックポイント①〜③参照)

Step4

受けたい治療を提供しているか確認する

イラストイメージ

MICSやカテーテル治療といった低侵襲治療を希望しているのに、通常の開胸手術しか実施していない病院に行ったのでは、希望の治療を受けることはできません。受けたい治療の希望がある場合は、受診しようと思っている病院がその治療法を実施しているかを必ず確認しましょう。

まだ受けたい治療がはっきりと決められない場合や、近くに希望する治療を提供している病院がない場合は、候補の病院が連携している病院をチェックしてみるとよいでしょう。

連携関係にある病院にはすぐに紹介してもらえる可能性が高く、また、専門的な治療は多少遠くてもそれを提供している連携病院で受け、退院後の定期検診はもとの病院でという選択もできます。

連携関係にある病院は、患者さんの情報や治療方針が共有されているという安心感もあります。

Step5

実績があるか確認する

自分の病気や受けたい治療に対して実績があるか、候補の病院同士を比較して、希望の病院を決めましょう。(→チェックポイント④参照)

Step6

実際に受診し、医師との相性を確かめる

イラストイメージ

自宅から通いやすく、専門性が自分の病気と合い、十分な実績のある病院でも、担当する医師と相性が合わないと納得のいく治療を受けることが難しくなります。実際に受診して、医師と良好な関係を築けるかを確認しましょう。

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