用語集
あ行
右心室
(うしんしつ)
心臓の主要なポンプ室の1つで、心臓の右側下方に位置します。右心房から三尖弁を通って流れ込んできた静脈血を、そのポンプ機能で肺へと送り出します。
右心房
(うしんぼう)
心臓に4つある部屋の1つで、右側上方に位置します。全身から戻ってきた静脈血が集まってくる部屋です。
か行
機械弁
(きかいべん)
人工弁の種類の1つで、金属(チタン)、カーボン(炭素繊維強化プラスチック)、布を巻き付けたリングから成ります。リングを心臓に縫い付けて固定します。
機械弁を入れたあとは、血栓塞栓を予防するために、生涯にわたり抗凝固薬(こうぎょうこやく)を服用します。
狭窄症
(きょうさくしょう)
加齢による硬化(石灰化)などが原因で、弁が非常に狭くなることです。狭窄症になると血液の流れが妨げられるため、弁の後ろに血液が「滞留(たいりゅう)」して血栓(けっせん、血の塊)ができやすくなります。
その血栓が弁を塞いでしまう「弁閉塞(べんへいそく)」が起こると、心臓のポンプ機能が低下し、肺の中の血圧が上昇します。大動脈弁狭窄症、僧帽弁狭窄症などがあります。
さ行
左心室
(さしんしつ)
心臓の主要なポンプの1つで、心臓の左側下方に位置します。左心房から僧帽弁を通って入ってきた動脈血を、そのポンプ機能で全身へと送り出します。
左心房
(さしんぼう)
心臓に4つある部屋の1つで、左側上方に位置します。肺で酸素を十分に取り込んだ動脈血を受け入れ、左心室へと送り出します。
三尖弁
(さんせんべん)
右心房と右心室の間にある3枚弁です。
三尖弁形成術
(さんせんべんけいせいじゅつ)
三尖弁が正常に閉じなくなり、血液が逆流するようになった三尖弁閉鎖不全症を治療する手術です。弁の傷んだ部分を取り除いたり縫い合わせたりして修復します。
生体弁
(せいたいべん)
人工弁の種類の1つで、ブタまたはウシの心のう膜を材料に作られます。生体弁は布で覆われたフレームに取り付けられており、そのフレームを心臓に縫い付けて固定します。
生体弁は術後に血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)が起こるリスクが低いため、特別な理由がない限り、抗凝固薬(こうぎょうこやく)を服用するのは一般的に術後3カ月間です。ただし、機械弁と比べて耐久性に劣るため、生体弁の劣化による再手術の可能性が高くなります。
僧帽弁
(そうぼうべん)
左心房と左心室の間にある2枚弁で、肺に非常に近い場所に位置します。左心房から左心室へと正常に血液が流れるために必要な弁です。
僧帽弁形成術
(そうぼうべんけいせいじゅつ)
僧帽弁が正常に閉じなくなり、血液が逆流するようになった僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)を治療する手術です。弁の傷んだ部分を取り除いたり縫い合わせたりして修復します。
僧帽弁形成術の場合は、患者さん自身の弁(自己弁)が温存される(残る)ため、人工弁置換術とは異なり、長期間にわたる抗凝固薬(こうぎょうこやく) の服用や、人工弁の劣化といったリスクを回避することができます。また、自己弁を温存した方が、人工弁置換術を行うよりも心臓の機能がよく保たれ、長期生存率も良好であることがわかっています。
た行
大動脈弁
(だいどうみゃくべん)
左心室と大動脈(体中に血液を供給する主要な血管)との間にあります。左心室から大動脈へと正常に血液が流れるために必要な心臓弁です。
大動脈弁形成術
(だいどうみゃくべんけいせいじゅつ)
大動脈弁が正常に閉じなくなり、血液が逆流するようになった大動脈弁閉鎖不全症を治療する手術です。弁の傷んだ部分を取り除いたり縫い合わせたりして修復します。
TAVI(タビ:経カテーテル大動脈弁留置術)
(けいかてーてるだいどうみゃくべんりゅうちじゅつ)
大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)に対するカテーテル治療です。TAVIを行うときは、通常鼠径部(そけいぶ)(足の付け根)の小さな切開部から、カテーテルを通して人工弁を挿入します。
狭窄している部分をあらかじめバルーン(風船)で拡張し、自分の弁の上に人工弁を留置します。留置には人工弁をバルーンで拡張させる方法と、形状記憶合金の人工弁を自己拡張させる方法があります。生体弁が留置されると、血流が正常に戻ります。
局所麻酔で行え、体への負担が少ないTAVIは、従来の外科的な大動脈弁置換術(だいどうみゃくべんちかんじゅつ)が困難な患者さんにとって効果的な治療法であると考えられています。しかし、血管にある程度太いカテーテルを通し、自分の弁の上に人工弁を留置するため、血管や弁の状態によってはTAVIが適さないことがあります。
患者さんの望むライフスタイルや、病状および手術の内容を考慮し、主治医と十分に話し合う必要があります。
は行
閉鎖不全症(逆流症)
(へいさふぜんしょう、ぎゃくりゅうしょう)
心臓の弁が正常に閉じなくなったために、血液が逆流している状態を「閉鎖不全症」または「逆流症」といいます。「機能不全症」ということもあります。
閉鎖不全症になると、一定量の血液を次の部屋に送ることができなくなります。僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症などがあります。
弁置換術
(べんちかんじゅつ)
病気になった弁を取り除き、人工弁(機械弁または生体弁)と置き換える手術です。弁が狭くなる狭窄症や、弁が正常に閉じなくなって血液が逆流する閉鎖不全症の患者さんに対して行われます。
僧帽弁置換術、大動脈弁置換術、三尖弁置換術があり、これらはすべて全身麻酔下で行われます。
ま行
MICS(ミックス:低侵襲心臓外科手術)
(ていしんしゅうしんぞうげかしゅじゅつ)
肋骨(ろっこつ)の間の胸や、胸の正面の骨を小さく切開し、そこから高解像度カメラを挿入して、弁形成または弁置換を行います。MICSは切開創が小さいため、上衣を脱いでも傷跡が目立ちません。
また、従来の開胸手術よりも術後の回復が早い、感染症や脳卒中などの合併症リスクが低いなどの報告もあります。しかし、MICSは切開部位が小さいために手術の難易度が高く、開胸手術と比べて手術時間が長くなります。そのためMICSはすべての患者さんに適しているわけではありません。
患者さんの望むライフスタイルや、病状および手術の内容を考慮し、主治医と十分に話し合う必要があります。